戦国アニメ・ゲームの世界では…

秋葉原を歩けばいたるところに戦国武将の姿が溢れています。
たとえば…
- 『戦国BASARA』伊達政宗が「Let’s Party!」と叫んで六爪流で敵をぶった斬る。いや、政宗そんな英語使わん…!
- 『信長の忍び』千鳥ちゃんが可愛すぎるけどあんな超有能美少女スパイが史実にいたのか疑問。
- 『刀剣乱舞』謎の戦場で刀剣男士たちが「主のために」と戦いまくるけどあの刀が戦国で活躍したエピソードはどこ…?
- 『信長の野望』シリーズ武将能力値で織田信長が統率97・政治95と超ハイスペック。だが本当に信長の経済力はそこまであったのか?
アニメやゲームの「戦国」は最高に面白い。
だけど…
「史実の戦国武将の国力って実際どれくらいだったの?」
この疑問にガチで答えたくて今回の記事を書きました。
なぜ「国力」を比べるのか?
戦国時代は武力だけでなく経済力・行政能力・インフラすべてが絡み合った総合格闘技です。
天下人に成り上がるためには:
- 石高(経済基盤)
- 軍事力(兵力、鉄砲数)
- 統治能力(行政)
- 城郭や都市整備(インフラ)
全てが必要。
今回の記事では織田信長・豊臣秀吉・徳川家康、この三大天下人の全盛期の国力を徹底比較します!
すべての数字は一次史料&近年の研究を参考にしつつ歴女も歴史オタも納得できるレベルで試算しています。たぶん。
【経済力】商業都市の収益と直轄石高
織田信長:堺を狙う革命児
- 領内商業都市:
堺(掌握進行中)年商推定:30万貫(約300億円規模)
京 年商推定:10万貫 - 楽市楽座を実施
- 経済制度革新の先駆者だが未完成
織田経済圏は巨大だったが支配の途上。堺を完全に抑えきれなかったのが惜しい。
石高(直轄領)
- 尾張国(ほぼ全域)→ 約60万石
- 美濃国 → 約50万石
- 北伊勢 → 約10万石
- 近江(北部)→ 約20万石
- 若狭国 → 約12万石
- 越前国 → 約40万石
- 京都周辺(洛中直轄含む)→ 推定5〜10万石
- その他飛び地(丹波、播磨の一部)→ 合計10万石ほど
合計推定:約200万〜210万石
豊臣秀吉:大阪の覇者
- 領内商業都市:
大坂(堺を凌駕する新都市)年商推定:60万貫(約600億円規模)
京 依然商業中心 - 大坂をゼロから造成し天下の台所を造る
経済力は日本史上最強。秀吉の天下は経済で支えられていた。
石高(直轄領)
- 摂津国 → 約30万石
- 和泉国 → 約15万石
- 河内国 → 約30万石
- 大和国 → 約64万石(秀長の死後直轄化)
- 山城国 → 約20万石
- 近江国南部 → 約20万石
- 尾張国一部 → 約10万石
- 播磨の一部 → 約10万石
- 洛中直轄(京都御土居内領含む)→ 推定5万石
- その他飛び地 → 合計20万石程度
合計推定:約220万〜230万石
徳川家康:江戸の開拓者
- 領内商業都市:
江戸 家康時代はまだ成長途上
年商推定:30〜40万貫(約300〜400億円)
京・大坂 支配下に置くが直轄ではない
家康存命中は大坂には及ばず。しかし将来的には江戸が最強都市へ成長する布石を打った。
石高(直轄領)
徳川家康の「幕府開設時」の直轄領だけで試算:
- 武蔵国(江戸周辺)→ 約70万石
- 下総国 → 約20万石
- 上総国 → 約10万石
- 上野国 → 約30万石
- 駿河国 → 約30万石
- 遠江国 → 約20万石
- 三河国 → 約30万石
- 伊豆国 → 約10万石
- その他(飛び地)→ 約10万石
合計推定:約230万〜250万石
→ 江戸開府以降、直轄領の集積が加速。
総評: 直轄領ベースでの経済力は
家康 ≧ 秀吉 > 信長
【軍事力】兵力・鉄砲・城郭
織田信長
- 鉄砲保有数:
- 約5,000〜10,000挺
※長篠の戦いで3,000挺動員
保有数推定:5,000挺〜10,000挺
保有率:全大名中ダントツ
- 約5,000〜10,000挺
- 城郭:
- 安土城
- 岐阜城
- 長浜城など
- 直轄領に約50城
- 直轄動員兵力:
- 兵力(動員力・直轄のみ)
- 軍役基準は1万石あたり250人程度(織田家の軍役割制から計算)
- 直轄兵力のみなら:
約200万石 × 0.025 ≒ 50,000人 - → 信長軍の総兵力15万〜20万説は「織田家臣全体+従属勢力」込みの数字。
豊臣秀吉
- 鉄砲保有数:約10,000挺以上
※朝鮮出兵時、20,000挺を命じる
秀吉個人保有は推定:10,000挺以上
全国に鉄砲検地を行い総管理 - 城郭:
- 大坂城(史上最大級)
- 全国に支城整備
- 直轄領に約60〜70城
- 直轄動員兵力:
- 兵力(動員力・直轄のみ)
- 豊臣政権は兵農分離が進んでいたので兵役換算はやや低めで計算
→ 1万石あたり約200人換算 - 直轄兵力:
約220万石 × 0.02 ≒ 44,000人 - ただし奉公人制でさらに大軍を編成可能だったため秀吉個人の臨時動員力は別格。
徳川家康
- 鉄砲保有数:約3,000〜5,000挺(直轄領のみ)
※関ヶ原時:3,000〜5,000挺
江戸幕府成立後に保有増加
家康個人領では保有数やや少なめだが、傘下大名を合わせると最多 - 城郭:
- 江戸城
- 直轄領に約70〜80城
- 直轄動員兵力:
- 兵力(動員力・直轄のみ)
- 徳川家は家臣団が武家奉公人化しており兵役基準はやや低め
→ 1万石あたり約180人換算 - 直轄兵力:
約240万石 × 0.018 ≒ 43,000人
総評:
城郭の規模
秀吉(大坂城圧倒的) > 信長(安土) > 家康(江戸初期)
城郭数:
家康 > 秀吉 > 信長
兵力動員力では
信長 > 秀吉 ≈ 家康
鉄砲だけ見ると…
秀吉 ≈ 信長 > 家康(個人領ベース)
ただし家康は天下人後に全国の鉄砲数を把握する立場へ。
信長は領地の拡大途中で討たれたため将来的には秀吉・家康に迫る規模になる可能性大。
大名 | 直轄石高 | 直轄兵力(概算) |
---|---|---|
織田信長 | 約200〜210万石 | 約50,000人 |
豊臣秀吉 | 約220〜230万石 | 約44,000人 |
徳川家康 | 約230〜250万石 | 約43,000人 |
- 鉄砲数は秀吉がトップ(兵農分離で農民動員を減らしていた分、兵力率が低下)
- 動員兵力は信長がわずかに上回る(軍役割制が厳格だったため、実質動員数が大きい)
- 城郭数は家康(関ヶ原後の領国再編で飛び抜けた直轄領を確保。ただし兵役基準は江戸初期で抑えめ)が最も多いが規模で言えば秀吉の大坂城が圧倒的
【行政能力】統治制度の完成度
織田信長
- 初期の楽市楽座
- 城下町整備は先駆的
- 奉行体制はまだ未整備
- 知行制は譜代家臣中心、石高より「役割」が先行
豊臣秀吉
- 五奉行・五大老制度確立
- 太閤検地で石高統一
- 軍役も石高で割当 → 軍政と民政の一体化
- ただし個人権力依存が残る
徳川家康
- 幕藩体制の母体完成
- 代官・奉行・目付体制
- 軍役・年貢制度も完全に統一
- 旗本・御家人システムで直属兵力を細分化管理
- 全国統治の精度が最も高い
総評:
行政能力は…
家康 > 秀吉 > 信長
信長はまだ軍事権力主体
家康は統治機構の完成度で他を圧倒。秀吉は過渡期。信長は構想段階。
家康の代には幕府体制が完成
秀吉は移行期でやや手探り
【インフラ】交通・都市整備
織田信長
- 安土城など革新城郭を建設
- 交通整備を始めるが途中
豊臣秀吉
- 大坂城と御土居整備
- 大規模な都市計画を実施
徳川家康
- 江戸城と城下町建設
- 五街道整備で交通網を国家レベルに
総評:
家康の五街道整備が突出。秀吉は都市そのもののインフラ整備で圧倒的。
【国力スコアリング】最終ランキング
評価項目とウェイト
ウェイトは下記表の通りに独自規定。
項目 | ウェイト | 理由 |
---|---|---|
経済力(都市・商業規模) | 30% | 国庫・兵糧・金山銀山含む経済基盤 |
軍事力(兵力・鉄砲・城郭数) | 30% | 国家維持には軍事力が最重要 |
行政能力(統治制度の完成度) | 20% | 領国経営の安定度 |
インフラ(交通・城郭規模・都市整備) | 20% | 経済・軍事を支える裏の力 |
- 経済力(30%)
- 軍事力(30%)
- 行政能力(20%)
- インフラ(20%)
織田信長
経済力:70 (堺掌握途上。京支配進行中。経済制度革新の先駆者だが未完成)
軍事力:80 (鉄砲数トップクラス。動員力も強大。制度化がまだ完成途上)
行政能力:60 (革新的だが制度はまだ暫定。権力基盤が本人に集中しすぎ)
インフラ:65 (安土城など画期的。交通整備も進むが途上)
加重平均
経済力:70 × 0.3 = 21
軍事力:80 × 0.3 = 24
行政能力:60 × 0.2 = 12
インフラ:65 × 0.2 = 13
総合:70点
豊臣秀吉
経済力:95 (大坂の一極集中経済。日本史上最高クラスの経済都市誕生)
軍事力:90 (朝鮮出兵の保有鉄砲数最多。軍政と財政の連動強化)
行政能力:75 (五奉行・五大老体制は先進的。ただ「個人統治」の限界あり)
インフラ:85 (大坂築城、御土居など都市整備・交通網整備も進む)
加重平均
経済力:95 × 0.3 = 28.5
軍事力:90 × 0.3 = 27
行政能力:75 × 0.2 = 15
インフラ:85 × 0.2 = 17
総合:87.5点
徳川家康
経済力:80 (江戸は成長中でまだ大坂には及ばず。直轄地経済力は秀吉に次ぐ規模)
軍事力:85 (家臣団の構造は盤石。鉄砲数はやや秀吉に劣るが安定)
行政能力:95 (幕府体制完成。統治機構は天下一※やり過ぎ!)
インフラ:90
加重平均
経済力:80 × 0.3 = 24
軍事力:85 × 0.3 = 25.5
行政能力:95 × 0.2 = 19
インフラ:90 × 0.2 = 18
総合:86.5点
最終結果
順位 | 大名 | 総合点 |
---|---|---|
1位 | 豊臣秀吉 | 87.5点 |
2位 | 徳川家康 | 86.5点 |
3位 | 織田信長 | 70点 |
結論:
国家としての国力スコアは
秀吉 ≈ 家康 > 信長
ただし信長は未完成ゆえに伸び代だらけ!
- 経済力のピークは秀吉
→ 大阪を「天下の台所」に育成。モンスター都市が国力を一気に引き上げた! - 軍事インフラ・兵器数は信長と秀吉が双璧
→ 信長は制度化途上。秀吉でピーク - 行政体制は家康が最も完成度高い
→ 幕府制で全国管理が確立
信長は未完成ゆえにスコアが伸び悩んだがもし本能寺がなければ90点超えも狙えたであろうポテンシャルの化け物です。

項目 | 信長 | 秀吉 | 家康 |
---|---|---|---|
経済力(都市規模) | 堺・京(未掌握部分あり) | 大阪(圧倒的) | 江戸(まだ成長中) |
鉄砲保有数 | 約5,000-10,000挺 | 約10,000挺以上 | 約3,000-5,000挺(個人領) |
城郭規模 | 安土城 | 大坂城(最強) | 江戸城(後に天下の中心) |
城郭数 | 約50 | 約60-70 | 約70-80 |
奉行・行政 | 制度途上 | 五奉行・五大老 | 幕府体制完成 |
知行制 | 役職優先 | 石高統一 | 幕藩体制確立 |
くまおの視点👀
戦国時代はアニメやゲームの中で華やかに描かれがちですが、今回の比較でわかったのは織田信長・豊臣秀吉・徳川家康それぞれがまったく違う形で国を築き、経済力も軍事力も行政能力も個性が際立っていたことです。
筆者は無論ノッブ最強!にロマンを感じざるを得ません。
ですが、秀吉治世以降の新世代によるストーリー展開も大好きなのですが…。
アニメやゲームでは「派手さ」や「カリスマ性」に注目が集まりますが、史実を数字で紐解くと意外な違いが見えてくるのが面白いところ。
オタク系記事に歴史もありだなと。
推し活目線で妄想するのも悪くないと改めて感じました。
好評いただければ、上杉・北条・島津などの分析記事もシリーズ化します。
これからも戦国をさらに深堀りしていきたいと思います!
All Write:くまお
↓歴史カテゴリーを特集した記事です!↓
2000年〜2009年 現在の『オタクの聖地秋葉原』を形成する10年間
2010年〜2019年 秋葉原の進化を語る上で外せない10年間
↓最強決めようぜシリーズ記事↓
【最強きめようぜ!】秋葉原 vs 池袋 徹底比較の特集記事はこちら
参考文献・データ
- 藤田達生『天下統一と城郭』
- 藤井讓治『豊臣政権の支配構造』
- 谷口克広『織田信長家臣人名辞典』
- 小和田哲男『徳川家康』
- 『信長公記』
- 『日本城郭大系』
- 内藤東甫『大日本国志』
- 国立公文書館所蔵資料(大名知行高)
- 宮本義己『徳川家康の城郭政策』
History is not only a list of dates and names, but the pulse of human dreams and ambitions.