第1章:円安が秋葉原フィギュア市場に与える衝撃

2025年春──秋葉原の街を歩けばいつもより早い時間に“完売”の札が並ぶフィギュアショップのショーケース。
「えっ、今日発売だったよね?」「予約してたのに…」
そんな声が飛び交う中原因として真っ先に上がるのが円安です。
■ 2025年歴史的な円安水準へ
今年3月、日本円は一時1ドル=160円を突破しました。これは1990年代以来とも言われる水準でドルやユーロを握る外国人にとっては「今が日本買いのチャンス」というわけです。
とくにフィギュア市場は数ある日本製品の中でも“クールジャパン”を象徴するジャンル。美少女フィギュア、ロボット系、特撮、アニメキャラ、VTuber、ゲーム作品──そのどれもが海外オタクたちの羨望の的です。
■ 秋葉原の店員が語る「異変」
秋葉原の某フィギュア専門店スタッフによれば、
「以前は土日のまとめ買いが多かったんですが最近は平日朝から外国人バイヤーが複数人で来店してショーケースの中から“箱買い”していくんです。スタッフ側も一部は“あ、これ業者さんだな”って分かりますね」
この異変の背景には円安の“購買力ブースト”があります。たとえばもともと2万円の高額フィギュアが、為替差で実質130ドル前後まで下がってしまうと海外では“激安”扱い。高品質なメイド・イン・ジャパンがその価格なら大量買いも当然です。
第2章:転送業者と闇バイヤーが集う秋葉原の最前線
秋葉原のフィギュアショップを巡っているとある光景に気づきます。
「手にしているのは1体や2体じゃない」──店内で30体、50体とフィギュアをカゴに積み上げる人々。彼らは観光客ではありません。彼らは買い手の代わりに買うプロ「代理購入業者」「転送代行バイヤー」です。
■ 爆買い現場レポート:まるで卸売り
2025年4月某日、某ショップ前に停まっていた大型キャリーバッグ。店を出た外国人男性グループが段ボール5箱分のフィギュアを次々に詰め込んでいく光景は圧巻でした。
- 「1人じゃなくチームで買いに来る」
- 「複数のショップを回って1日で100体近く買う」
- 「PayPayやWeChat払いが使える店ばかりを狙う」
まさにターゲットは業務的な効率。
■ SNSで増える「あなたの代わりに日本で買います」
InstagramやX(旧Twitter)では「日本の最新フィギュア買ってきます!」「秋葉原の現地から代行します!」という投稿が急増中。
中には企業として運営している「国際発送専門」アカウントも存在しその多くが中国本土・台湾・香港・タイをメインマーケットにしています。
価格はというと──
- 定価:¥15,000(国内店頭価格)
- 海外販売価格:$180〜220(約¥28,000〜34,000)
なんと倍以上のプレミア価格。送料を差し引いても大きな利益が残る構造です。
■ 転売ヤーの実話:小売店に直交渉
とある中古系ショップの店員いわく
「たまに月に30個以上買うから安くならない?って交渉してくる外国人がいるんですよ…。まあ、断ることもあるけどこっちは売れれば嬉しいってのも正直なところで…」
これは、小売と業者の垣根が揺らいでいる証拠。円安が生んだ見えない問屋化が進行しているとも言えるかもしれません。
第3章:円安フィギュアバブル|価格の推移とプレミア化ランキング
フィギュア市場の価格はもはや芸術品や株と同じような扱いになりつつあります。
為替相場・国際需要・供給数・キャラ人気…あらゆる要素が絡み合い相場は日々揺れ動く。
ここでは2020年からの価格変動と注目キャラの高騰ランキングを徹底分析します!
発売年 | 商品名 | 発売時価格 | 2023年相場 | 2025年相場(現在) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
2020年 | レム 晴れ着Ver(KADOKAWA) | ¥13,800 | ¥19,800 | ¥28,000 | 海外で超人気、タイ・中国で特に |
2021年 | 初音ミク MIKU EXPO 2021 | ¥12,100 | ¥15,000 | ¥25,000 | アメリカのライブ需要で爆発 |
2022年 | マキマ(チェンソーマン)1/7 | ¥14,300 | ¥16,500 | ¥30,000 | 欧米人気+円安で転売対象 |
2023年 | 星野アイ(推しの子)ねんどろいど | ¥6,500 | ¥8,800 | ¥14,500 | 実写化後に海外注文増 |
2024年 | アルティメットマドカ(再販) | ¥17,600 | ¥20,000 | ¥33,000 | 再販でも完売続出 |
■ プレミア化キャラ別ランキングTOP5
1位:マキマ(チェンソーマン)
- 国内では「マキマはもういい」と言われつつ欧米では圧倒的人気
- 髪の造形・スーツ姿・女王様的ポーズが文化差に刺さる
2位:レム(リゼロ)
- 根強い人気、特に東南アジアでの信仰度
- 晴れ着・水着・チャイナ…派生衣装の全てが売れる
3位:星野アイ(推しの子)
- アニメ×実写で二度バズリ
- 「ねんどろいど」がなぜか海外でプレゼント定番化
4位:初音ミク
- 世界規模のIPや海外イベント連動で常に高値維持
- 「MIKU EXPO限定」など特典系にプレミア
5位:中野三玖(五等分の花嫁)
- 台湾・中国圏で“癒し系ヒロイン”としての需要が高く、キャラ単体でも価格が跳ねる
第4章:「メイド・イン・ジャパン」フィギュアが世界を魅了する理由
秋葉原で目にするフィギュアたち──それは単なる玩具ではありません。
それぞれが美術品であり、文化財であり、工芸品。そしてそれを支えるのが日本の職人技術です。
海外バイヤーたちは円安によって安くなったから買っているのではありません。
「日本製だからこそ欲しい」のです。
■ 細部まで作り込まれた「原型師」の魂
たとえばくまお隊長も一度は手に取ったであろうアルターの美少女フィギュア。
スカートのひだや指先のしなり・視線の微妙な角度──それぞれに命が宿っている。
海外製の大量生産品では再現できな空気の表現力。
その中心にいるのが日本の原型師たちです。
インタビューで語られたとある若手原型師の言葉が印象的でした。
「目が合った気がするって言われると嬉しいです。そこを一番こだわってるので」
この目が合う感覚こそ世界中のオタクたちを虜にしている秘密かもしれません。
■ 塗装技術の違い、ここまで違う!
また海外バイヤーが驚くのが塗装精度の高さです。
髪のグラデーション・衣装のツヤ感・瞳の中の光の演出。一体ごとの仕上がりに手仕事による個体差すら芸術と化しています。
比較として中国製の量産フィギュア(ノーブランド)の例を挙げると:
- 目がズレている
- 髪の色が一色ベタ塗り
- スカートの模様が印刷ミス
一方グッドスマイルカンパニーやコトブキヤの製品ではミスがほとんどなく再販品でもクオリティを維持。
■ オタク文化の“本場”で買う喜び
そしてもうひとつ日本製が特別視される理由は本場へのリスペクトです。
アニメ・漫画・ゲーム──すべての“原点”である日本の秋葉原で買うこと自体が、“巡礼”のような体験。
「このフィギュアはアキバで買ったんだ」
「実際に現地のショップで、棚から選んだんだよ」
この物語性がECサイトで買うよりもはるかに大きな価値を生んでいるのです。
第5章:今こそ“狙い目”!円安ショックの中で買うべきフィギュア10選+現地店舗ガイド
円安によりプレミア価格が乱舞する中それでも*今が買い」なフィギュアは確かに存在します。
しかも秋葉原の実店舗にはまだまだ掘り出し物や在庫が眠っている可能性も!
※転売目的はダメですよ!鑑賞やギリ投資としてなら。買い占めはダメです。
フィギュア名 | メーカー | 理由 | 店頭価格(目安) |
---|---|---|---|
レム -チャイナドレスver- | eStream | 海外人気高、再販不明 | ¥23,000前後 |
星野アイ -Stage Ver- | グッスマ | 実写後に需要急上昇 | ¥13,500前後 |
初音ミク -レーシング 2023- | GSR | 海外レース層からも需要 | ¥15,000前後 |
中野三玖 晴れ着ver | KADOKAWA | 東アジア人気で上昇中 | ¥16,000前後 |
アルティメットまどか 再販 | アニプレックス | 最終入荷濃厚 | ¥30,000前後 |
ブラックロックシューター DAWN FALL | グッスマ | 海外人気再燃 | ¥11,800前後 |
天音かなた(ホロライブ) | コトブキヤ | VTuber人気で需要急増 | ¥14,500前後 |
シャナ(炎髪灼眼ver) | コトブキヤ | 懐古ファン層+中国圏人気 | ¥12,000前後 |
セイバーオルタ 着物ver | アルター | 欧米圏で評価急騰中 | ¥28,000前後 |
アーニャ&ボンドセット | ねんどろいど | ギフト用途&家族需要 | ¥6,000前後 |
■【秋葉原】主要フィギュア店舗ガイド(完全現地特化)
◎ あみあみ秋葉原ラジオ会館店
- 品揃え・価格バランス・外国語対応◎
- 最新フィギュアからグッズや同人誌まで網羅
- 買取受付も外国人に人気。多言語POPあり
◎ ボークス秋葉原ホビー天国2
- 完成度重視ならここ一択
- アルター・コトブキヤなどの高品質ライン強い
- 店舗ディスプレイが“映える”ので撮影客も多し
◎ ソフマップAKIBA アミューズメント館
- B1〜5Fまでフィギュア天国。中古在庫が豊富
- イベント連動や予約特典も多数
- 「たまたま見つけた掘り出し物」が多い
◎ 駿河屋秋葉原本館(万世橋近く)
- 中古価格の参考基準になるショップ
- プレミア商品が綺麗な状態で展示
- キャラ・作品ごとに棚が整理されて見やすい
◎ リバティー秋葉原(各店あり)
- “通”が狙うマニアック在庫の宝庫
- 店舗によって専門ジャンルが異なるので“はしご推奨”
- ショーケース内の高額品に要注目!
◎ 秋葉原ラジオ会館全体
- “聖地”としてのフィギュア巡礼地
- 各階に異なるジャンルのフィギュア店が並ぶ
- 海外オタクたちの記念撮影スポットNo.1
第6章:現地で見た“異変”の証拠|空棚・完売ポップ・世界と戦う秋葉原
秋葉原を歩くとそこかしこにある“異変の痕跡”。
「え?今日発売だったよね?」「再入荷って書いてあったのに」
完売ポップ空になったショーケース・貼り紙の山。
これが2025年の秋葉原“円安フィギュア戦争”の実態です。
■ 調査記録:完売ポップと空棚のリアル
【ホビー天国2】3F美少女コーナー:
- 「ご好評につき完売いたしました」
- 「次回入荷未定。お取り置き不可」
- 「海外からのお客様へ:お一人様一点までご協力ください」
→ 上記の張り紙が3枚連続で貼られた棚の前に、並ぶ人、撮影する人、落胆する人…。
【駿河屋本館】入ってすぐのショーケース:
- 星野アイ・レム・三玖・セイバー…人気キャラがズラリと「SOLD OUT」札つき
- 海外バイヤーがその棚を指差しながら店員に「This one, when restock?」と真剣に尋ねる場面も
【ラジ館:あみあみ店頭】
- 混雑を避けて整理券配布 → 朝9時には50枚が配布終了
■ そして、日本のわたしたちは…
もちろん影響を受けているのは海外勢だけではありません。
地元の秋葉原勢、週末に通うリピーター、予約に失敗した会社員、学生、主婦層──
SNSではこんな声も。
- 「円安のせいで全然買えない…」
- 「まさか再販が即完するとは」
- 「俺の分の三玖、誰か返して…」
いま秋葉原で繰り広げられているのは世界と戦う戦場。
だがだからこそ面白い。だからこそ秋葉原に足を運ぶ意味がある。
第7章:円安がもたらした“チャンス”か“危機”か|秋葉原とフィギュア文化のこれから
円安は一見すると安く買えるという恩恵のように見えます。
しかしその恩恵が“外貨を持つ者”に集中したとき日本のオタク文化はどうなるのか?
この問いは秋葉原という街にこそ深く突き刺さります。
■ 世界と戦う秋葉原のフィギュア店たち
海外バイヤーに対応する多言語POP、整理券対応、購入制限──
現場の対応は進化を続けていますが同時に「文化のバランス」も問われています。
- フィギュアが“本来の買い手”に届かない状況
- 秋葉原が“倉庫”として扱われる風潮
- 文化よりも為替に翻弄される物販現場
これを危機と見るか世界に羽ばたくチャンスと捉えるか──
■ フィギュアが“株”になった時代
フィギュアを「好きなキャラの立体化」でなく、
「リセール目的の投資商品」として扱う声が増えているのも事実。
メルカリやeBayで即転売。
海外でプレミア化ランキングが組まれ
レビュー動画が投資指南のような口調になる。
そんな世界で果たしてワタシたちオタクはどう生きるのか。
■ それでも、現地で買いたい理由がある
やはり、“秋葉原の棚から、自分で選んだフィギュア”にはストーリーがあります。
買った瞬間の空気、店内BGM、POPの字、レジでの会話──
それらは、すべてモノではなく記憶として残る文化財**です。
円安で街が騒がしくなろうとも
それを乗り越えて推しを迎えに行く私たちがいる限り、
この街は生き続けるのです。
くまおの視点👀
円安によって秋葉原のフィギュア棚は確かに姿を変えました。でもそれは文化が終わるサインではなくむしろ世界がこの街に夢中である証。値段や転売に翻弄されても推しを手に取る喜びはきっと変わらない。くまおはこれからも秋葉原を歩き続け変わりゆく現場と変わらない情熱の両方を記録していきます。あなたの推しフィギュアが今いくらかなんてそれよりもなぜそれを選んだのかを覚えていてほしいんです。

「あなたが最後に秋葉原で買ったフィギュアは、何でしたか?」
「そして、それは“いくら”だったか覚えていますか?」
「価格だけでなく、“買った意味”まで覚えていたら──それがあなたのオタク力です」
All Write:くまお